息子

娘とは1歳9か月離れて生まれた弟は人見知りもなく揺れる草花を見てはにこにこ笑っている子供でした。しかし、言葉がとても遅く、娘のように「あれは?これは?」と質問をすることもなくお母さんと私を呼ぶこともありませんでした。用事があれば私の手を引っ張っていき無言で要求をする子供でした。いわゆるクレーン現象という自閉症の子供の特徴がありました。1歳になる少し前に撮った写真があります。ローラー滑り台を滑っているのですがローラーの音が苦手だったのか耳をふさいでいます。耳ふさぎもよくしていました。

ある日、息子をベビーカーに乗せてスーパーに行きました。息子が2歳を過ぎたころだったかもしれません。お店に入ると泣き喚き、いつもにこにこしている子がどうしたのだろうと思うことがありました。そんなことが何回か続いたときに娘が「この前来たときは○○コーナーから見て回ったのに今日は違う。もしかしたらそれで泣いているのかもしれないよ?」と教えてくれました。「まさか?」とは思いましたが次回からは同じところから見て回るようにしました。息子は泣きませんでした。娘は幼かったのですが細かいことに気づく利発な子供だと思いました。

息子はとても偏食で離乳食をほとんど食べませんでした。パンがゆもおかゆも野菜も食べませんでした。娘に手がかかっていたこともあり何を食べていたのか記憶にありません。食べたとしても飲み込むタイミングがわからないということがあり、声をかけると飲み込む、または、吐き出すという感じでした。離乳食が終わり小学生になってからもお肉以外は食べようとしないので毎食、5ミリ程度の野菜を食べさせるのに大騒ぎをして苦労をしました。保育園でもお皿の陰にグリーンピースをたくさん隠して先生が大笑いをしていました。

こだわりもとても強くよくヒステリーを起こしてひっくり返り頭を打ったり壁に頭を打ち付けたりすることがよくありました。例えばバナナを外で食べていた時に地面に数ミリ程度口からこぼれてしまいました。大泣きしながら地面に這いつくばり爪でひっかいて取ろうとするのですがなにせ数ミリの柔らかいバナナですから跡形もなく消えてしまいました。その時の泣き方は尋常ではありませんでした。息子は物にとても執着があり、たとえゴミだったとしても一度、自分の手に入ったものがなくなることに耐えられず、ごみを捨てさせるのも大変でした。

話し出したらきりがないことですが三歳児検診の時に誕生日プレゼントで祖母に買ってもらった新しい下駄をはいていったのですが息子が椅子に座って何気なく下駄の裏をみて「ぎゃー」と泣いて廊下にひっくり返りました。どうしたのかと様子を見ていると下駄の裏のゴムが少しすり減っていました。元に戻してほしいというような言葉を言っていました。なぜか下駄が好きでもらったときはとても喜んでいたので気持ちはわかるのですが「これもショックなのね」と。若い人の言葉でいうと「マジか!」という感じでした。

2人の子供たちは明らかにほかの子供達とは違っていたので区役所の保健士さんに相談をしましたが娘さんは利発なお子さんで息子さんはまだ幼いですから。とかお母さんが神経質ではありませんか?と言われ、助言らしきものはありませんでした。それも残念でしたが保健士さんが地域の子育ての講座か何かで私の住んでいる地域に来たことがありました。私は参加をしていなかったのですが絵本の会の代表者が地域でも活躍していたので保健士さんと話す機会があったようです。

ある日、絵本の会の代表者が子育てで悩んでいると保健士さんから聞いたけど大丈夫?というようなことを聞いてきました。私は保健士さんがどこまで話したのかはわかりませんでしたが相談したことを知られたくなかったので複雑な気持ちになりました。なぜ知られたくなかったのか?あの時の気持ちはよくわかりませんがほかの子供と違うとか自分が悩んでいるとかを知られたくないという見栄だったのかもしれません。保健士さんも絵本の会の代表者の方もただ私の力になりたかっただけだとは思いますがその時の私はもう誰にも相談しないと思ってしまいました。

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